口の健康でQOLを上げる①
- 康弘 若菜

- 7月18日
- 読了時間: 4分
咀嚼や嚥下あるいは発音といった口腔機能は、審美性を含めて社会生活に大きな影響を及ぼします。超高齢化社会において高齢者の健康寿命を延ばし、いくつになっても自立した社会生活を送るためには、口腔機能を維持することの重要性は社会課題となってきました。
従来から病気の治療効果を判定する時、医療者中心の評価判定が行われてきましたが、近年の疫学研究の発達により「患者自身による主観的評価」といったさまざまな指標が生み出され、この主観的指標は客観的指標と組み合わせて治療効果を判定し医療行為につなげたり、健康度を測定するといった場面で利用されています。
QOLや患者満足度といった、数値化しにくい指標にエビデンスを持たせる方法というのは少々難解で数学的な理論の基づくものですが、筆者の出来る範囲で可能な限り簡単にご説明いたします。しばらくの間どうかお付き合いください。

目次
<口腔関連QOLとは>
◇ 健康関連QOL
◇ 口腔関連QOL
<代表的な口腔関連QOL尺度>
<口腔関連QOL尺度の目指すところ>
<口腔関連QOLとは>
◇ 健康関連QOL
QOLはWHOは1994年に、「個人が生活する文化や価値観の中で、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
健康に関連したQOL(健康関連QOL)は、広義のQOLの中で医療の面を主とした基本概念です。医療や予防概念の普及により健康がどれだけ改善したかを評価する側面を持っています。
医療では、健康関連QOLが治療成績だけでなく治療後の生活の質を評価する指標として利用されていましたが、介護福祉の分野ではADL(日常生活動作)に加えQOLを含めたより包括的な評価が積極的に行われています。
患者報告アウトカム(PRO)と呼ばれる指標があります。こちらは患者さん自身の症状の主観的評価をとらえるもので特定の症状についてその評価を行うものですが、QOLは患者さんだけでなく一般の方ご自身の健康感を広く全般に評価する違いがあります。
◇ 口腔関連QOL
口腔関連QOLとは健康関連QOLの中に含まれる一つと言えます。指標としては、咀嚼・嚥下・発音といった機能性、口腔顔面の外見をとらえる審美性、口腔疾患による痛みや不快感、さらには心理的要素や社会活動などの要素も指標として取り上げた構成となっています。これら口腔関連QOLが喪失歯、う蝕罹患、歯周病など臨床的な指標と組み合わされて、前述したPROとして利用されている報告もあります。
このようにQOLといっても幅広い概念が含まれているため、文献の趣旨を理解するためには熟練が必要です。もし分からないことがあれば迷わず専門家にご相談する姿勢が大事です。
<代表的な口腔関連QOL尺度>
個々の尺度の詳細については、その解釈に専門性を有することから主に研究や専門家による文献考証で利用されています。今後さらなる研究が進み、歯科の臨床に応用しうる簡単かつ多職種間で情報を共有する利便性をそなえた、国内で統一された指標が開発されることを強く期待します。
以下に日本語版が用意されている代表的な口腔関連QOL指標を記します。
General Dental Health Assessment Index(GOHAI)
Oral Health Impact Profile(OHIP)
Oral Impacts on Daily Performances(OIDP)
とくにGOHAIは全身の健康と口腔関連QOLとの関係を調べた文献の中でよく利用されています。質問による得点の合計GOHAI値と日本の国民標準値の両者を比較して、口腔の健康度を測定するものとして知られています。*ただしこの使用には著作権が伴うため、使用登録が必要となります。
<口腔関連QOL尺度の目指すところ>
全身のQOLと口腔関連QOLとは関連していることが最近の研究で分かってきました。歯科治療あるいは口腔疾患の予防啓発により口腔関連QOLを高めることが、全身の健康に大きく寄与しているということです。
近年の分子生物学的な手法に加えて、新しい統計解析手法を取り入れた質的研究を進めることこそ、将来の医学研究の形といえるでしょう。
口腔関連QOL指標を国内で一般的に使うためには、まだまだ多くのエビデンスを蓄積する必要があります。日常の臨床で活用していくためにも、より簡単で汎用性に優れた指標が開発されることを期待します。



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